【アプリ開発者インタビュー】セイカ歩数計|株式会社ウェブテクノロジ 取締役 経営企画部 部長 大和智明氏、R&D部 マネージャ 小野知之 氏

インタビュー | 2015年11月30日 月曜日

神奈川県が「健康寿命日本一への取り組み」を発表するなど、自治体での健康支援活動が、ICTの導入で加速してきました。しかし、予算がある程度確保しやすい都市部の自治体に比べ、地方の市町村に適した規模でできるICTを活用したサービスはまだ少ない状況です。そんな中、京都府精華町が歩数計アプリ「セイカ歩数計」をリリースしました。今回はこのアプリを開発した株式会社ウェブテクノロジの大和氏と小野氏にお話しを伺いました。

インタビュアー:渡辺 武友│撮影:木島 功介
取材日:2015年11月11日

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株式会社ウェブテクノロジ・コム│経営企画部 部長

大和 智明(やまと ともあき)氏

2010年夏、マンガ作成ツール「コミPo!」開発中に入社し、「コミPo!」 のリリースや、画像最適化ツール「OPTPiX imesta 7」シリーズやアニメーション作成ソフト「OPTPiX SpriteStudio」のマーケティングを主導。現在は歩数計アプリなどの「自治体向け健康増進アプリ」をはじめとした新規企画を中心にプロデュース。

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株式会社ウェブテクノロジ│R&D部 マネージャ

小野 知之(おの ともゆき)氏

会社設立初期より同社で多数の製品に開発メンバーとして参加。現在は主に「コミPo!」「OPTPiX imesta 7」シリーズおよび「歩数計」の開発ディレクター兼プログラマーを担当。大変な思いをしながら作り上げた「コミPo!」をこよなく愛する、こだわり派の一人。

 

┃来年25周年を迎えるソフトウェア開発会社

 

-ウェブテクノロジ社はどのようなビジネスをしているのですか?

大和智明氏(以下大和):弊社はソフトウェア開発会社です。大きな柱としては、ゲーム開発や各種コンテンツ制作向けの画像最適化ツール「OPTPiX imesta 7」シリーズを提供しています。スマホなどのモバイル向けから、家庭用ゲーム機、パチンコなどの遊技機、カーナビや家電の画面に、デジタルデータ放送向けなど、幅広く対応しています。

次が制御系・業務系ソフトウェアの受託開発です。機器へ組み込むソフトウェアや、放送局向けのハイブリッドキャストコンテンツのUI制作を支援するツールの開発など、こちらも幅広いです。

来年で25周年を迎えます。長年続けたことによって、関係各社様から信頼を得て、技術のかなり深い部分の開発にも関わってきました。

 

-ソフトウェア開発会社は競合もたくさんいると思います。25年も続いた秘訣ってありますか?

大和:社長はよく運が良かったからと言っています(笑)。実はこの会社、こだわりが強い人間が多くてですね、自分が興味を持ったことを徹底的に追求してしまうという文化があります。

もともと画像最適化ツールも、CGなどが好きで画像の研究していたスタッフが減色に興味を持ったのがきっかけでした。90年代後半頃、ゲームなどで使用されるCGが16色から256色メインへと移行が進んでいった時代だったのですが、当時はPhotoshop(Adobe社の画像加工・編集ソフトウェア)などで作成したフルカラーのデータを、うまくゲーム(ソフトウェア)など向けに256色をきれいに減色できる良いソフトがなかったのです。その頃、弊社が開発した減色ソフトをオンラインソフトとして出しており、このソフトがゲーム開発会社の目にとまり、さらにゲーム開発で必要となる要望を踏まえてチューニングや機能追加していったところ、ゲーム業界で画像を最適化するツールとして、スタンダードなものとなっていくことができたのです。

現在、画像最適化ツールとしては、スマホアプリ開発向けがメインになってきています。

 

┃開発メンバーの“こだわり”から生まれた歩数計

 

-『なぜ「セイカ歩数計」を手掛けたのですか?

大和:まず精華町との出会いですが、弊社がコンシューマ向けに提供しているソフトウェアで「コミPo!」があります。「コミPo!」とは、絵が描けなくても3Dデータを組み合せることで誰でも簡単にマンガが作れるWindows用のソフトです。この「コミPo!」、コアファンが多く、弊社でもコンシューマ向けでは異例のヒット商品なのです。そして精華町の役場の中にも「コミPo!」を気に入っている方がいまして、精華町のキャラクターをコミPo! 用の3Dデータとして作ってほしいと相談がありました。完成までにはいろいろなハードルはありましたが、2年前に「京町セイカ」と言う、女性キャラクターが誕生しました。現在は、町の広報活動で活用いただいています。

精華町とはその後、弊社が「コミPo!」にとどまらずソフトウェア開発会社とご理解いただいていたのもあり、キャラクター以外でも相談いただくことがありました。その1つが「スマホ向け歩数計アプリ」でした。精華町では介護予防のため、健康増進活動を進めていまして、そこで活用できる歩数計アプリを検討することになったのです。

実はこのお話をいただいたとき、タイミングよく社内で歩数計アプリの研究を小野を中心に進めているところでした。例によって、こだわりある者が自主研究をはじめていたのです(笑)。そのような取り組みも評価され、もちろん公募ではありましたが、弊社が担当することになったのです。

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-どのような研究をしていたのですか?

小野知之氏(以下小野):すでにたくさんの歩数計アプリが世に出ていますが、加速度センサーを使って単純にカウントしているだけなど、データの精度が高くないものが多いというのが現実でした。そこで、高い精度を徹底的に追求した弊社独自の歩数計測エンジンを作ろうと思ったのです。

研究中は我々の試作アプリと、精度的に評判がよい既存アプリと、国内有名メーカーの歩数計測専用機とで精度比較テストを繰り返しました。データ取りをしているときは、毎日10台ぐらいの端末を身に付けて通勤するなどのハードな日々が続きました(笑)。そうして我々の計測エンジンが、それら歩数計やアプリと同等の精度になるようアルゴリズムを工夫し、チューニングしていきました。検証期間は4ヶ月くらい続いたと思います。

Androidで検討する場合、厄介なのは端末によって加速度センサーの感度や精度が微妙に異なるので、そこも影響なく使えるようにしなければなりませんでした。さらに研究を続けると、もっと大変なことに気づきました。それは“個人差”です。人によって歩き方がかなり違っていたのです。自分にぴったり合っている精度であっても、他のスタッフには必ずしも適したものにはならないことに気づきました。

 

-個人差とは、どのような違いがあるのですか?


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:具体的には、踏み込みが強い人や、伸び上がりが早い人、歩幅の違いなど、それぞれの場合で加速度の変化の波形が違ってきます。実は端末ごとの誤差よりも、個人差の誤差の方がはるかに大きかったのです。それらの差を吸収できるようにアルゴリズムを更に研究し、丁寧にチューニングしていきました。

大和:正直、もういいんじゃないかと思うタイミングは何度もあったのですが、納得してくれなくて(笑)。期日もあったので、ギリギリまで待つことにしました。これも弊社の開発メンバーのいいところだと思うようにしていますので(笑)。

小野:弊社が20年以上やってこられた理由は、こんなふうにこだわりが強いスタッフが多いからってことだと思いますよ!

大和:オーバースペックだなと思うこともありますが(苦笑)、でも最終的にはこのオーバースペックを高く評価していただけるケースが多いので、開発メンバーのことを信頼して任せているんです。

 

-常に歩数をカウントしているとなるとバッテリーの問題が気になりますが、そのあたりの対策は?

小野:そこも含めて研究し、チューニングをしました。普通に使っていてもバッテリー消費がなるべく気にならず、朝充電して1日過ごし、夜の段階で余裕を持って残っているようにすることを必須と考えました。日々の生活で、歩数計アプリ自体が負担に感じられては意味がありませんからね。

 
-その他、特長になるところはありますか?
 

小野:サーバ連携を意識した作りになっています。ただアプリを提供するだけでなく、健康管理で利用者の歩数データを集めるなどの拡張はあると思いますので。現状では自分の端末にデータが貯まりますが、サーバ連携を意識した作りになっていますので、導入後にデータ集計をしたいと考えても、1から作り直すことがないよう想定しています。

他には、使い方として介護予防を想定すると、高齢になる前の人がターゲットになりますが、ある程度年齢がいった方も使う可能性を考慮して、お年寄りから子供までがわかりやすく使いやすいと思えるよう、操作性や各画面の見やすさを追求しています。グラフの表示の仕方もそうですね。これらには「コミPo!」などで培ったノウハウも応用しています。

それと、続けていて飽きないよう、継続的にイベントが起きる仕組みを入れました。一定条件を充たすたびにキャラクターからメダルがもらえると言うものです。これはサーバ連携の際、歩数イベントなどのインセンティブ管理にも使えることを想定しています。
 
-今回リリースされた「セイカ歩数計」用にカスタマイズしたことはありますか? 

大和:自治体の困りごととして、ゆるキャラブームで、キャラクターは作ったけど活用できていないケースがあります。日々使うアプリでキャラクターをうまく使えれば、住民の方々にも愛着を持ってもらえる可能性があります。

精華町のキャラクター「京町セイカ」は、キャラクター作成当初から、どう使っていくとよいか検討し、効果的に活用してきました。今回もうまく組み合わせることができたと思っています。
 
-精華町としては、このアプリをどう活用するのですか? 

大和:最初からフルに準備しているのではなく、順を追って進めています。まずは3月にAndroid版をリリースし、11月にiOS版をリリースしました。精華町ではiOS版が出るまでは、サイト上での紹介程度でしたが、11月15日に「せいか祭り」と言うイベントがあるのでウォーキングイベントやスタンプラリーで活用します。11月22日にもこのアプリを使ってウォーキングイベントが開催されます(注;インタビューはイベント開催前に実施)。

まだ先にはなりますが、町民のデータ管理と歩数の連動も視野に入れています。
 
-Android版とiOS版の違いはありますか? 

小野:iOS版はiPhone 5s以降、iOS8.0以降に対応しています。Android版とはデザインや機能は一緒です。違いは計測方法です。iPhone 5s以降では歩数カウント機能が標準装備のためそちらを使用しており、弊社でチューニングしたエンジンは使っていません。とは言っても、我々のテスト結果ではAndroid版との誤差は数%以内なので、どちらを使ってもほとんど違いはないと思います。

 

┃はじめてでも、潤沢な予算がなくても、住民に役立つICTサービス提供を支援

 
-御社としては今後、この歩数計アプリをどう展開するのですか?

yamato_ono大和:主には、他の自治体で精華町のような悩み、例えば町の規模が大きくなく、人口も多くないため、予算があまりかけられないが、できる限り住民の健康に役立つことをしたいと考えている自治体に提供したいと思っています。すでに何箇所かに提案しています。我々としては、医療費抑制など社会貢献につながればと思っています。

伝えたい特長として、まずは介護予防をターゲットとした場合、高齢者ではなく30〜50代の壮年層になりますので、その層にアプローチするのにアプリが手軽であると言えます。精華町に提供したものと基本機能は一緒で、デザイン(色味)、キャラクター、コメントを入れ替えて個性がだせます。

もう1つが、ゲーム開発に携わってきたノウハウから、どう楽しんでもらうか、メダルの仕組みなどに活用しています。それらデータを、住民の健康管理をするサーバなどに送信できます。

このスペックでiOSとAndroid両方に対応で、開発から1年間のサポート込みでおよそ300万円程度での提供も可能です。導入までの期間はデザインなどのカスタマイズがスムーズに進めば、最短約2ヶ月程度でリリースできます。今までアプリ導入の経験のない自治体や企業にも、わかりやすい仕組みとなるよう心がけました(詳細はこちら)。

 
-予算に限りがある町や村でも導入できそうですね。歩数計アプリの機能もバージョンアップしていくのですか?

小野:先ほど話した“個人差”ですが、多少の差であれば、それほど違和感がない精度バランスになっています。しかし、高齢者や障害を持った歩行が困難な方にまで対応できるものにはなっていないと思っています。今後は、そのような方でも歩数管理ができるものを、例えば傾き具合のデータを併用するなどで対応できないか?など研究していきたいと思っています。
 
-自治体向けのサービスとしては、今後どのようなものになっていくのでしょうか?

大和:精華町をはじめとして、各自治体でICTの活用を検討したいテーマは、他にもたくさんあります。しかし、限られた予算ではそうそう導入ができないと伺っています。そのような規模の自治体でも導入しやすい仕組みを提案していきたいと思っています。

その1つがコミュニケーションに役立てる「見守り機能」です。例えば離れて暮らす家族に歩数計のデータを送って、健康情報をもとに会話のきっかけになればと思っています。

その他、歩数計アプリに限らないことも考えています。例えば防災無線の整備が進んでいない地域で、スマホのプッシュ通知を活用するなど、大掛かりなものを導入する以外にもできる方法があると思っています。

自治体の想いはあるが、低予算でも実現するお手伝いをしていきたいです。

代表アプリデータ

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アプリ名 精華i介護予防歩数計アプリケーション 「セイカ歩数計」
リリース日(Android版先行リリース) 2015年6月8日
 

精度が高く、バッテリーの持ちのよい歩数計アプリ。精華町住民向けだが誰でも無料で利用できるセイカ歩数計の紹介はこちら

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