【シェアメディカル対談】1.スマホサービスがメディカル領域に入ることができた要因

インタビュー | 2017年11月30日 木曜日
医療サイドから【ヘルスケアのアプリの展開事例】(ヘルスケアアプリ座談会)
研究員によるデバイスやアプリのレビューをお届けしてきた当コーナー、今回は、メディカルメッセージングサービス『MediLine®』を提供する株式会社シェアメディカル代表取締役 峯さんに登場いただき、医療現場におけるスマホアプリの活用や開発の現場を教えてもらいます。単なるスマホアプリの話だけでなく医療現場の問題など様々な話しを伺ったので、何回かにわけて掲載します。 今回は、「スマホサービスがメディカル領域に入ることができた要因」を聞いていきます!
ヒアリング:木島功介
取材日:2017年9月26日

【シェアメディカル対談】
 1.スマホサービスがメディカル領域に入ることができた要因←今回はこちら
 2.アプリ開発現場の苦労
 3.これからスマホアプリが発展する場所

 

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出席者/左から、峯さん、木島

 

医療版LINEです

木島 「まず、御社の事業、サービスをご紹介ください」

 「弊社、シェアメディカルという名の通り、医療のコミュニケーションという部分から、今の様々な医療問題の解決を目指してつくった会社です。MediLine®は、“医療版LINE”のようなチャットサービスです。4月に正式版をリリースして、現在80施設に導入されています」

木島 「かなり導入が進んでいますね」

 「大きいところですと医科大学などもありますし、首都圏最大の在宅専門クリニックにも導入していただいています。利用ユーザーとしては、全体で1,000名を超えました」

use_2017-09-26 16.16.13木島 「利用ユーザー数も、着々と伸びていますね」

 「我々は、単なるアプリ開発会社ではなく、医療コミュニケーションのあり方を中心に考えていることが、結果として現れてきたのだと思います。
営業手法としても、わかりやすいコミュニケーションを大切にしています。あえて「医療版LINEです」と伝えるようにしています。そう伝えると9割の人が理解できます。シンプルにわかりやすいことが評価となり、導入に繋がります。ですので、なるべくゴテゴテと機能を付けず、シンプル&ミニマルに徹する。誰でも使えるユニバーサルデザイン思考で設計しています」

 

医療コストの問題が変化のポイント


木島 
スマホアプリはiPhoneが登場してから10年も経つので、かなり変化してきました。サービスとハードを組み合わせることを考えた場合、大変な部分があるのではないですか?」

 「大変ですね。技術的な部分よりも、論理的整合性を取るのが大変です。
私は、前職で医療アプリをつくっており、製薬会社の社内アプリなどもよく手がけていました。
驚くような例があったので紹介します。ある企業のMRにiPadを持たせました。約2,000台ほどでした。ここで問題になったのが、社内のコンプライアンスの改訂が間に合わず、無線LANの利用ができないため、アプリを配布してインストールしてもらうことができなかったのです!クライアントからは何か方法を考えて欲しいと相談され、部に1台あるパソコンにiPadを繋いで、アプリのファイル書き出しを使って、無理やり取り出すという、なかなかエキセントリックなことをしました(笑)。
普段、OSのアップデートをどうしているのか聞いてみると、「全社一旦集めてやります」とのことでした(苦笑)作業時間を考えると、新しいものを買った方がよいんじゃないかと思いましたね。

先程の無線LAN問題以前に、セキュリティの観点などからか、業界的にオンライン利用は率先して行われてきませんでした。しかしここのところオンラインの利用が活発になってきました。理由はコストです。
特に電子カルテの更新が大変になります。2〜4年ぐらいの頻度で更新が行われますが、1回数億から数十億円のコストがかかるのです。地方の病院ですと、元々赤字が続いているので、そのような費用を定期的に捻出するのは不可能なんですね。それで“クラウド型電子カルテ”を導入せざるを得なくなってきました」

木島 「峯さんから見て、医療機関のコスト問題が、アプリやクラウド利用が進んだ一番の要因だと思いますか?」

 「はい。それともう1つあると思っています。厚労省のグランドデザインとして、在宅医療を促進しています。これは、10年前と大きく変わった点ですね。今まで大学病院とか急性期病院に入院していた人を、なるべく普通の病院に戻し、病院に来ていた人をクリニックに戻し、クリニックに来ていた人を、薬局に向かわせる方針です。できるだけ医療にかからせない方向に向かっています。
つまり、風邪ぐらいだったら、もう薬局行って、OTC(※)の風邪薬飲んでくださいとしたいのです。
財務省も、セルフメディケーション税制(※)をはじめました。あの手この手で、医療側に来なくてよい流れをつくっているのです。
さらに将来的には、病院からベッドを減らしたいと考えています。それだけ医療財政が逼迫しているということです。いずれ外来の報酬を下げて、訪問医療を加点することになると、『待ちの医療から攻めの医療』に行かざるを得なくなってきます。
そうなると、外に向かった医療者同士のコミュニケーションが、重要になってきます。
訪問診療は先生1人、看護師1人、ドライバーの3人体制で回る事が多いのですが、チーム間の連携であったり、本院との検査データのやり取りであったりと、安全に情報のやり取りができる手段が必要になってきます。
しかし電子カルテ自体が、LAN内という閉じられた空間で利用を想定されていて、情報を公開する仕様になっていない。だから業務フローの中で「こういう検査データが欲しいです。送ってください」「月が変わったので、保険証の確認はどうする?」という課題が出てきますので、その場で写メを撮って、すぐ送れるような環境が必要になってくるのです」

※OTC: OTC医薬品(一般用医薬品)。薬局・薬店・ドラッグストアなどで販売されている医薬品。
参照:http://www.jsmi.jp/what/
※セルフメディケーション税制:スイッチOTC医薬品を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができる制度。
参照:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html

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木島 「情報全部をやりとりするというより、システムは疎結合した中で、必要な情報だけやり取りする必要性がでてくるのですね?」

 「そうです。医療情報は電子カルテに載せていいますが、チーム間の業務連絡用のサービスが必要なのです。確かに電子カルテをオンラインでやり取りできるようになるのが理想ですがこれは難しいので。
例えば病名もICD-10(※)を使用していたり慣用病名を使っていたり、薬も一般名やブランド名、コード体系も様々なものが付いています。それぞれ長年の蓄積を考えると、医療全体で連携するのは、もう無理な状態です。、我々の考えはそこを無理やりくっ付けるというより、別の情報ラインとなるチャットでやり取りしましょうとしています」

※ID10: 世界保健機関(WHO)が作成した疾病及び関連保健問題の国際統計分類
参照:http://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/

 

医師の生産性とは

木島 「峯さんが会社をつくられたのは3年前ですが、ちょうど3年前くらいからだいぶスマートフォンが普及し始めて、いろいろな関係者の知識、スキルセットが身についてきて、心理的ハードルも下がってきたところで、御社のサービスが受け入れられる余地と社会情勢と組み合わされたのですね!?」

 「はい、そうなります。もう1つの理由は、院内で携帯電話を使うこと自体が、経産省のほうで「問題ない」とされたのもブレイクするポイントとなりました」

木島 「携帯電話の院内利用については、15年ぐらい前から専門家は「影響はない」って言っていましたね」

 「ペースメーカーに影響あると言われていましたが、実際 事故は、世界中で一例もないのです。それを国が「大丈夫ですよ」と言い始めました。あとは各病院内のローカルルールだけの問題となるので、今はもう普通に使われていることが多いです」

木島 「そうすると、御社のアプリサービスも含め、段々とメディカルの中に、スマートフォンも含めてインターネット機器が入れる余地が出てきたのですね?」

 「そう、やっとこれからです。
『論理的安全性』と、僕は呼んでいるのですが、技術的な部分は厚労省や経産省なり所轄官庁が良いと言ったので問題ありません。
今、私が進めているのがユニファイド・コミュニケーションという考え方です。ビジネスの世界で通信の統合と言われるものです。チャット・電話・メールなどさまざまな通信手段を、1つの端末に統合し、相手の都合に合わせて切り替えるのがユニファイド・コミュニケーションです。これをメディカルの分野に展開するのが一番ホットなテーマです。
私は医師の生産性を最も下げているのは、電話だと思っているのです。何かやっていても、常に電話が鳴って「はい、はい」って電話をとらなきゃいけない。緊急のものだったら、致し方ないのですが8割ぐらいは、あんまり関係のない、今じゃなくても良い「あとにしてくれ」と言いたくなるものです」

木島 「電話の悪いところですね。電話を取って聞かないと相手が何を伝えたいかが分からない」

 「常に相手に時間軸を合わせないといけないことが、日本の医療の生産性を最も下げています。経営的に考えれば、一番時給の高い医師の時間を、どんどん奪っているわけです。つまり経営指標で考えると、「電話ってどうなの?」となります。医療にこそユニファイド・コミュニケーションが必要だと思っています」

木島 「LINEと言うと、コミュニケーションツールとかエンタメ要素に見られます。でも、峯さんが考えてるいことは、トヨタの改善のように生産性の向上ですね」

 「例えば院内で一番無駄なのが、人を探す行為です。大きい病院だと、先生がどこにいるか分からず「〇〇先生、そちらに行ってませんか?」「どこにいる?」「後ろにいた!」のように。。。
人を探す行為は、一番時間を浪費させるだけで何も生まないものです。よってチャットを使って非同期のコミュニケーションを行うのが良いと考えています。そして医師が対処可能なタイミングで、返していくやり方をとれば、その結果として生産性が上がるはずです。これを実現するためにMediLine®をコツコツ一生懸命つくっています」
 

今回はスマホがメディカル領域に入る過程についてディスカッションしました。実際の医療現場を見ての課題は、今後広がるであろう医療分野でのネットサービス展開に役に立つ話ではないでしょうか。
次回 は【スマホ開発現場の苦労】を話し、最後は【これからスマホアプリが発展する場所】について議論する予定です。
近々掲載しますので、少々お待ちください!!

 <次回> 2.アプリ開発現場の苦労

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