【シェアメディカル対談】2.アプリ開発現場の苦労

インタビュー | 2017年12月15日 金曜日
医療サイドから【ヘルスケアのアプリの展開事例】(ヘルスケアアプリ座談会)
研究員によるデバイスやアプリのレビューをお届けしてきた当コーナー、今回は、メディカルメッセージングサービス『MediLine®』を提供する株式会社シェアメディカル代表取締役 峯さんに登場いただき、医療現場におけるスマホアプリの活用や開発の現場を教えてもらいます。単なるスマホアプリの話だけでなく医療現場の問題など様々な話しを伺ったので、何回かにわけて掲載します。 今回は、「アプリ開発現場の苦労」を聞いていきます!
ヒアリング:木島功介
取材日:2017年9月26日

【シェアメディカル対談】
 1.スマホサービスがメディカル領域に入ることができた要因
 2.アプリ開発現場の苦労←今回はこちら
 3.これからスマホアプリが発展する場所

 

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出席者/右から、峯さん、木島

 

ユーザーエクスペリエンスが差別ポイント

木島 「実際にMediLine®を導入された医療機関から、事前に言われるであろうと予想していたことがいくつかあると思います。実際には、意外な反応はありましたか?」

 「あります。他社の製品とLINEを同時にテスト利用してもらい、「今後、どっちを使いますか?」と聞くと、100%の人がLINEを選択するのです。その理由をいろいろ聞いたのですが、「単純に使い慣れているから」という答えが返ってきます。やはり人間は使い慣れた道具を選ぶものなのです。

しかも、日常忙しい人が、新しいものを導入するということは結構ストレスで「えっ、また新しいこと学ばなきゃいけないの?」と、ネガティブから入ってしまいます。でも、MediLine®は、「LINEぐらいは使えるでしょう?」という形から入るので、「これは使えます」となります。

機能がないので「そもそも、他社とどう差別化しているのですか?」と、よく言われますが、逆に機能を絞ることで差別化しています。機能を豊富にすると“使い慣れない!”との意識を芽生えさせてしまいます。

私は“ユーザーエクスペリエンス”を、初めて医療に取り入れたのがMediLine®だと思っています。どう使われるのかは、PCのモニターに向かっているだけではわからないので、現場に行きます。すると、「この機能、こんな使い方あったんだ」というような、ビックリする使い方をしていることがあります」

木島 「システムを開発する側が、良かれと思って機能を入れすぎて複雑にしない、使い手のことを考えてよりシンプルにしたことがよかったわけですね。
ありがちなのは、開発側が要望を聞いて、1個1個機能を増やしてしまう。そうすると利用者視点を無視してしまうことになり、上手くいかないですね」

 「皆が使い方をいろいろ考え始め、特にそういうことに今まで苦手だった人が、自分たちも使えるということが分かると、途端に様々な業務アイデアが出てきて、率先して使うようになります。「もう、これがないと仕事にならない」と言ってくださる先生たちが増えています。いろいろな使い方を皆さんそれぞれ工夫されて、MediLine®のファンになり使っていただけるというところがポイントです」

木島 「面白いですね。“まずはシンプルにつくる”ことは大事ですよね。なかなか、理解してくださらない方も多いですが(苦笑)」

 「ありますね(笑)。何しろエンジニア魂をもっていると「他社はいろいろな機能をつけてるから、うちも負けないように差別化するためには、もっとこうしたほうが良い」となりやすいです。MediLine®は機能表にすると、極端に少ないのです。機能リッチでなくても、多くの医療者にMediLine®を選んでいただいています」

 

アプリ申請の苦労

木島 医療関連で使ってもらうために、セキュリティーではどのような対策をしているのですか?」

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 「例えばMediLine®の裏側部分は、過剰なくらいしっかりと暗号化に対応しています。厚生労働省が三省4ガイドラインを出していますが、一言『患者さん情報は、暗号化することが望ましい』としか書いてないんですよ!」

木島 「せっかくのガイドラインなので、もうちょっと具体的に踏み込んで欲しいですね。「責任をどちらで取るかは、お互いに話し合って決める」みたいなことが書いてありますが」

 「一応、照会しても「あくまでガイドラインになります。ガイドラインがないと、お困りの方もいらっしゃるようですので」と、言われました(笑)。

ただシステム導入する側としては、気になるんですよね。通常で考えれば「暗号化、SSL通しました」で良いわけです。でも、我々としては、エンドToエンドで、全てAESの256ビットで暗号化して、サーバー内でも暗号化かけるまで全部やっています。しかも、アメリカ商務省のBISという輸出規制製品リストで認定をとって暗号製品として登録してまでやっています」

木島 「大変そうですね。。。」

 「Appleのアプリ申請で聞かれるじゃないですか「暗号使ってますか?」と。 ほとんどのアプリでは「いいえ」のはずです。99%「いいえ」なんです。でも「はい」にすると、とんでもないことになるんです(笑)」

木島 「ここら辺は一般的にはあまり認識されていないですが、申請での対応を知っている立場からするとかなり大変なので、自ら「はい」は選びにくいところですね(笑)」

 「Appleは暗号製品の証明書がないと、申請できないと言うので。結局2ヶ月ぐらいかかりました」

木島 「これ以外でもAppleの担当者といろいろやり取りされていますよね?」

 「5回ぐらいリジェクトされました」

木島 「凄いですね。普通のスマホアプリを開発するよりも、苦労耐えない部分がありますね」

 「でも、医療用業務ツールという面では、やはり必要です」

木島 「見た目はエンタメ系に見られてしまうかもしれないですが、裏は完璧に業務ツールですね」

 「そうです。相手は、24時間365日 動いている医療機関ですから、それを裏切ってはいけない。我々も、ほぼ同じ間合いで動いています。僕なんか、もうここ数年ずっと携帯握りしめて寝ています(笑)」

 

開発依頼者が知っておいた方が良いこと

木島 「スマホが出て、この10年で何が変わったかなと考えたとき、即時性が随分変化したのかなと思います。昔のようにメールが中心だと、ちょっと1時間ぐらいレスがなくても許されるカルチャーだったのが。スマホは即時ですね!?
スマホの通知も、最初の頃はあまり良い出来とは言いにくかったですが、この5年ぐらいはきっちり届くようになっていますよね?」

 「これは重要なことです。弊社が競合と一番比較されて言われるのが、通知があることです。ブラウザ型の製品もあるのですが、能動的にこちらからメッセージを取りに行くのは、運用上やはり難しいと言われます」

木島 「峯さんが創業されてからの3年間でも、システム環境はどんどん変わっていきますよね。この辺りは、どうやって乗り越えられているのですか?」

 「そうですね、調べていて気付いたことがありました。今回iOS11※で、32bitアプリがほぼ全滅したじゃないですか!?結構、医療アプリも影響を受けており、いろいろ聞いてみると、非対応アプリの多くは書籍の公式アプリなんですね。出版社が差別化でアプリも出したアプリです。彼らのビジネス的には、その版1回出しておしまいです。アップデートする習慣が無いのかな?」

※iOS:iPhone、iPadのOS。
参照:https://www.apple.com/jp/ios/ios-11/

木島 「アップデートは、お金も取れないですからね」

 「取れないから「予定がありません」なんですね。いわゆる書籍系の非アプリベンダーは、予算が取れないがために、そのままというのは結構あるみたいです」

木島 「その辺り、上手くお金が回る仕組みがあると、皆ハッピーで良いんですけど」

 「本音を言えばアプリ提供側には関係ない話じゃないですか!?本来は「何でそんなOSアップデートで32bit非対応なんてことするの?」「後方互換は取っといてよ!」と思ってしまいますよね。

とは言え、Appleの環境でビジネスをする以上、彼らの仕様が変わったら、それに合わせていくしかないですね。それでもテスト端末の範囲がほぼ決まっているiOSはまだ楽ですが、Androidは画面サイズがバラバラでもっと大変です。今回iOS、特にiPhoneXは画角が変わるから結構しんどそうです」

木島 「この対談までにiPhoneXがリリースされていたら持ってきて2人でいじろうかなと思っていましたが、iPhone8しか発売されなかったから、8しか持って来てないんです。(対談は2017/9/26)」

 「iPhone8はプロセッサー自体も新しくなっていますね。一番インパクトが大きいのは、iOS11の入力周り。日本語入力周りのキーボードアプリが、結構変わっているので影響受けています。あと、AutoLayout※ですね」
 

※AutoLayout:iOSアプリのユーザインタフェイスを作成するシステム。iPhoneは端末ごとに画面サイズが違うが、これを使うと画面サイズや向きの違いにも、柔軟に対応できるレイアウトを作成することができる。
参照:https://developer.apple.com/jp/documentation/UserExperience/Conceptual/AutolayoutPG/index.html

木島 「AppleがAutoLayoutで作れと、言ってますからね」

 「それ、対応しないところは、iPhone Xになるともっと悲惨なことになるのではないかと思います」

木島 「アプリ開発を依頼する側もある程度知った上で、予算を確保していただいて、どれをやって、これを保持しようかって考えていただいた方が、結果的にはハッピーになると思います」

 「それ良いですね。
私は「何世代まで、アップデートを保証しますか?」と、必ず契約のときに決めるんです。そうでないとあとでトラブル起こるのがわかっていますので」

木島 「最近思うのは、その酷さを知らないで、発注してしまう会社の方も大変ですね!?システム開発会社の営業が適当に「大丈夫ですよ」などと言ってしまうこともあるようで」

 「無責任に仕事を取ってくる人はいますから」

木島 「もう誰にとっても幸せじゃない。
あと、「クロスプラットフォームでつくります」的な話しがありますね。弊社でもいろいろ開発したことがありますが、結局 最後はAndroidなりiOSに合わせなければいけないことになります」

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 「ネイティヴでつくった方が、結果的に安かったりするケースですね」

木島 「開発側からみると宣伝通りにはいかないです。実際にサービス運営されて、物をつくってらっしゃる峯さんの口からガンガン言ったほうが、業界のために良いのではと思ったりします(笑)」

 「そうですね(笑)APIがどんどんなくなるとか、リファレンスにない隠れ修正があるとか、泣けてきます(苦笑)」

木島 「そうですよね!そのおかげでリジェクトされる(笑)。
でもこの業界はどんどん変わっていくわけですよね!?そしてこれから先も止まってくれないじゃないですか?」

 「止まってくれないですね」

木島 「その辺り、峯さんは開発リソース投下されてる中で、どのぐらい目配りされているのですか? 例えば30%ぐらいは変更対応で取っておくという感じですか?」

 「だいたい毎年、夏ぐらいから情報収集をして、ある程度どうなるか予想を立てながらやるしかないですね。しかし、実機がない場合がほとんどです」

木島 「ある程度シミュレーターでテストできるとは言え、実機とは違う動きをしますからね」

 「そうなんです。全然違ってきます。シミュレーターで動いたとしても、アーキテクチャーが違うので。実際、蓋を開けてみたら意外と寂しすぎて「これは使えん!」という話もあるし、その逆もありますよね。後方互換(※)をどこまで保つかも、考えなければいけないです」

※後方互換:新しいOSで古いOSのアプリが使える事。
参照:http://www.weblio.jp/content/%E5%BE%8C%E6%96%B9%E4%BA%92%E6%8F%9B%E6%80%A7

木島 「後方互換は難しいですね。最近セキュリティの勉強を、もう一回まじめにやっているのですが、OSが古すぎたり、ブラウザが古すぎたりすると、そこのセキュリティホールをつかれるから、「OS上げろ」というのは、仕方ない面もありますね」

 「iOSはユーザーが素直なのか、早い段階で最新版に揃うんです。ただ、Androidは未だに4.xとか、「まだ使う??」みたいなことも普通にあります(苦笑)OSの幅をとればその分だけチェックの工数、テスト工数が増えてしまいます。これがAndroidの場合は厄介です」

木島 「御社はAndroidのアプリも出されていて、先生方がいろいろな端末を持ってるケースだってありますよね。この辺りは、どのようにカバーされているのですか?」

 「一応、いろいろインタビューをします。あと、端末の利用状況なども見ますが、だいたい医師はiPhone使ってるケースが多いです。ただ、在宅医療や訪問看護を始めた事業者だと、スタッフの貸与端末をAndroidで揃えてるケースが多いですよ」

木島 「Androidの方が、安く端末を揃えられますからね」

今回はスマホアプリを開発する時に起きる問題点についてディスカッションしました。
実際にアプリを開発すると様々な落とし穴があるのですが、ネット上では個々の技術の話はあっても、プロジェクト計画を立てるときに意識する観点での話は少ないので有用かと思います。
最後は【これからスマホアプリが発展する場所】について議論する予定です。
近々掲載しますので、少々お待ちください!!

 <次回> 3.これからスマホアプリが発展する場所

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