【シェアメディカル対談】3.これからスマホアプリが発展する場所

インタビュー | 2017年12月28日 木曜日
医療サイドから【ヘルスケアのアプリの展開事例】(ヘルスケアアプリ座談会)
研究員によるデバイスやアプリのレビューをお届けしてきた当コーナー、今回は、メディカルメッセージングサービス『MediLine®』を提供する株式会社シェアメディカル代表取締役 峯さんに登場いただき、医療現場におけるスマホアプリの活用や開発の現場を教えてもらいます。単なるスマホアプリの話だけでなく医療現場の問題など様々な話しを伺いました。最終回の今回は、「これからスマホアプリが発展する場所」を聞いていきます!
ヒアリング:木島功介
取材日:2017年9月26日

【シェアメディカル対談】
 1.スマホサービスがメディカル領域に入ることができた要因
 2.アプリ開発現場の苦労
 3.これからスマホアプリが発展する場所←今回はこちら

 

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出席者/左から、峯さん、木島

 

ハブであること

木島 「その他にも、広がりなどありましたら教えてください」

 「MediLine®は現在、外国からの引き合いも多くなっています。

※2017年12月14日にメディラインはカンボジアのサンライズジャパンホスピタルで正式採用。
参照:https://www.sharemedical.jp/mediline-officially-adopted-at-sunrise-japan-hospital-in-cambodia/

MediLine®は、国内医療システムに組み込まれたレセコンや電子カルテなどとは異なり、ライトなコミュニケーションツールです。また、日本と違って海外、特に東南アジアなどは、PCよりスマートフォンの方が普及してるという現状もあります。そうした背景から、今は西アフリカなどからも引き合いが来ています」

木島 「日本でソフトウェアをつくってワールドワイドに展開するのは、なかなか難しい場合も多いです。しかし御社の場合は、面白いポジションをとっているのでチャンスがありますね」

 「海外では1日に何度も停電がある地域もあり、むしろパソコンは使えないのです。「そもそも固定回線がない」ということもあります」

木島 「そうですね。実は、アフリカの方がスマホ決済の導入なども進んでいるのではないかと思います。その中で、医療という分野においてもPCを通り越し、一気にスマホに向かうという状況は面白いですね」

 「本当ですね。地方では、今も呪術師が医者の代わりを担っているという場所もあります。そうした状況の中で、きちんとした医療知識を普及するために、例えばJICAや国境なき医師団などでMediLine®が使われたら面白いなと思います。

そうした1つのプラットフォームを目指してくというのが、私が一番やりたいことです。チャットツールを売りたいわけではなくて、プラットフォームをつくりたいのです」

木島 「コミュニケーションのハブであり続けるということですね」

 「はい。ハブであり続けて、その上にいろいろな電子カルテを繋ぐことができれば良いのです。近々、MediLine・Partner・Network(MPN)をリリースしようと思っています。医療機関に声をかけると面白いですよ。意外とプログラム好きな先生もいるので「ちょっといじりたい」「API見せて」と言われることもあるので、そのような要望があれば積極的に提供しています」

 

ルール順守の仕組み

木島 「峯さんは日本のいろいろな医療機関を見る機会があると思います。どのような分野がMediLine®に対して積極的に活用していると実感されますか?」

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 「在宅訪問系が積極的にきてくれているなと感じます。使ってみると良さが分かるとおっしゃっていただいています。また、最近では大きな病院からの引き合いが増えてきました。やはりアプリが評価されてのことかと思います」

木島 「何床ぐらいの病院でしょうか?」

 「200床以上の大きい急性期の病院です。
モダンホスピタルショーに出展した際、来場者の方にいろいろ聞きますと、臨床の中でLINEなどの無料SNSアプリを、ある意味イリーガルで使ってしまっている節があるのです。病院側もある程度は把握しつつあるようです。個人情報上、問題があると認識し、やはり取り締まらなければいけないと。

しかし、一律禁止してしまうと、既にそういう体制で医者側の臨床が回っていると、やはり不具合が出てしまうわけです。ではどうするか?ルールをどう順守するかと考えた際、「代替するものが欲しい」という声が上がる。そこで、MediLine®のニーズが高まるのです」

木島 「命を救うために写真を撮り、送信して診断してもらうという流れは本来必要ですよね?」

 「本来は必要です。しかし、それを「無届の状態で野放しにしてしまっている」というところが問題です。もし間違えて全く関係のない人に送っていたら、大変な騒ぎになるということです。

では、それをどうするのか?ここで、「オペ室にMediLine®を設置する。ハードウェア設置して使いたい」という話になるのです。ハードウェア版を提供したところ、なかなか好評でした」

木島 「以前にオンプレ(※)をやると聞いたときに、とても面白いと思いました」

※:オンプレ:オンプレミス。サーバーやネットワーク機器を購入(リース契約など)して、自社の建物内に設置・運用していくこと。
参照:https://www.idcf.jp/cloud/column/onpre_to_cloud.html

 「オンプレをやると、次は携帯端末がないのかと言われます。そして携帯端末を調達して欲しいと。さらにアプリストアもつくりました。医療用アプリがダウンロードできる専用のアプリストアです。医療者が必要になった時に、そこからダウンロードできるようにしたのです」

木島 「そこで、ビジネスも生まれますね」

 「はい。そこに、医療系アプリの配信プラットフォームとして、Appleと同じようなプラットフォーマーとなれれば良いと思っています。スマホアプリの配布はなかなか難しく、どこも成功していないのです」

木島 「いろいろなプロバイダーさんがやろうとして、5年ぐらい前に皆さん失敗していますね」

 「プラットフォームビジネスはFacebookも失敗しました。amazonもFirePhoneで失敗しています。本当に難しいのです。

しかし、MediLine®は医療従事者専用のツールですので、そこに特化すれば可能性があります。そのことを紹介すると、「それを成功させたい」「面白そうだ」と言ってくれる商社などが出てきて、「うちが資金を出します」と言ってくれるのです。

すると次に、「プラットフォームに広告を載せられるんじゃないか?」というような話になります。それで今度は広告代理店が、「話を聞かせてください」と来てくれます。
医療系の電子書籍などはニーズがあるので有りなのではないかと思います」

木島 「確かに専門書は有りだと思います。単価が高いですからね」

 

お医者さんの時間生産性を上げる

 「医療関係者向け情報サービスとして必要なのはアルバイト情報です。今、病院も給料は減少傾向にあります。これはなかなか大変です。アルバイトをしなければ暮らせないということですから」

木島 「お医者さんが副業をしなければ暮らせないという現状は、部外者が聞いたら驚きますね!」

 「だんだん生計を立てるのが難しくなってきています。当然、開業すれば収入は増えるでしょう。

しかし、開業には二の足を踏むものです。地方を見ると、年間何億も赤字を垂れ流して「一体この先どうするんだ?」という病院もあります。そういう現状を考えると、開業すれば収入アップという単純な話ではありません」

木島 「なかなか大変ですね。そうなると、もっと削れるはずの要素を削って、時間的生産性を上げていくしかありませんね」

 「はい。結局、時間的な生産性を上げるという部分を、きちんと考えたところが今までないのです。

日本の場合、こと医術に関してはかなりハイレベルだと思えます。しかし、「効率良くやる=手を抜いている」と思うのでしょうか?

海外の医療ドラマ「ER」などを見ると気付きますが、次々患者運ばれてくる混乱状態でも、自分の勤務時間が終われば「じゃあ、お先に」という感じで普通に帰ります。時間管理の考え方、それと分業が徹底しているのです」

木島 「この部分を早めにケアする必要がありますね」

 「はい。そこでツールの出番です。もう、医者は簡単に増やすことはできないし、これ以上の労務負荷をかけてもクオリティが下がる一方です」

 

テクノロジーで救えること

木島 「最後のテーマになりますが、今後3年、MediLine®としてはどの辺りを頑張ろうと考えていますか?

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また、スマホアプリとして、デバイスやソフトウェアも含め、「ここが良くなってくれたらMediLine®として拡張できるな」という部分はありますか?」

 「まず、音声認識、画像認識、AIも含めた部分です。それと医療分野のHR-Tech領域のソーシャルグラフ機能でしょうか。

医療機関の人手不足は慢性的です。MediLine®上でやり取りされるメッセージと、ユーザー同士の繋がりを可視化してソーシャルグラフを構築する。辞めそうな人、トラブル抱えている人を早期に抽出してケアするのです。

その辺りにAIを活用したいと考えています。辞めそうな人の行動は法則があるので、その兆候をAIが探知するというものです」

木島 「なるほど、面白いですね。先ほどの、海外のくだりでちょっと気になったことがあります。夏頃、MediLine®に遠隔医療の仕組みを取り入れられたというニュースを聞いて「何でだろう?」と思ったのです。それは、アフリカ方面など海外で使われるということが、かなり大きな受け皿ですか?」

 「これは本当に棚ぼたの話なのです。7月14日に医政局からの公的な発表がありました。そこで、遠隔診療を行うためのツールの条件、要件が発表されたのです。今まではテレビ電話や電話であることが必要で、いわゆる文字だけのメールやチャットはNGでした。我々としては、そこを歯がゆく思っていました。

それが7月14日の医政局の発表で、もう普通のSNSでも良いし、メールでも電話でも良い。単純に、医師が診断をするのに必要な情報を得られるものであれば何でも良い、という形になったのです。「おっ、これは遠隔診療に対応しちゃった?」という話になりまして」

木島 「なるほど。すると、やれる領域はまだまだありますね」

 「たくさんあります」

木島 「普通にインターネット、特にコンシューマビジネスの場合なら、当たり前になっているプラットフォームやサービス、コミュニケーションを絡めたエコシステムが、まだまだメディカル領域では出来上がっていませんね」

 「はい、まだまだです。コミュニケーションにおいては、やはり心理的距離と物理的距離は比例します。ですので、繋がっているということは孤独なときに支えになるのです。

特に研修医などが該当します。今後、研修医に僻地研修が義務化されるとしますね。都会にいるときは先輩、同僚の数が多いので、あまり有難みを感じないかもしれません。しかし島や地方に行くと、周りに知り合いは誰もいないのです。しかし村人からは「先生、先生」と頼られる。

そんな中で、「この症例は初めてみるな…」という場面もあるでしょう。本土に患者を送りたくても「海が時化ているから船は出せません」「飛行機が飛びません」となれば、もう自分だけで頑張るしかないわけです。これはやはり怖いですよね!?ここはぜひネットを使って助けになりたいのです」

木島 「なかなか難しいですよね」

 「そうです。「その苦労は、何か違うのではないか?」と思うのです。勤務時間とか情報も含めた体制バックアップという当たり前の権利を医師にも与えてあげないと、医者のなり手がいなくなってしまうと思うのです」

木島 「我々がテクノロジーで、そこを救えると良いですね」

 「はい。まずは患者さんを直接救うというよりも、患者さんを救うために、主戦力である医療者を救っていく。そうしなければ、もう大勢の患者さんを救うことはできないのです。

まずは医療現場の人たちを、可能な限り一人残らず救いたい。もう、自分はそこばかり考えています」

木島 「なるほど、興味深いテーマでした。とても面白い話をありがとうございました」

 「こちらこそ、ありがとうございます」

今回、医療・開発にフォーカスして企画しました当座談会、いかがでしたか?インタビューした私も驚く話が多かったので、読者の皆様のお役にたてるインタビューになっていれば幸いです。
今回は医療コミュニケーションという切り口でしたが、医療分野におけるAI活用など2018年はより一層 Computer ScienceとInternetがヘルスケア領域に入ってくると思われます。その時に、何が問題になっていくか、どのように解決すればよいかまた議論を深める機会を作りたいと考えております。

 

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