【アプリ開発者インタビュー】ポケットセラピスト│株式会社バックテック 代表取締役社長 福谷 直人 氏

インタビュー | 2019年1月22日 火曜日

2018年12月4〜5日に開催された「Health 2.0 Asia – Japan 2018」にて、2日目にピッチコンテストが行われ、ファイナリスト6名の中から見事優勝を勝ち取った株式会社バックテックの福谷氏にお話しを伺うことができました。
今回ご紹介する「ポケットセラピスト」は、1つの機能としてのアプリではなく、バックテック社が提供するサービスの根幹をなすメディアとして位置づけることができます。
それでは「ポケットセラピスト」について詳しく伺いたいと思います。

インタビュアー:渡辺 武友
取材日:2018年12月14日

株式会社バックテック│代表取締役社長 福谷 直人

株式会社バックテック│代表取締役社長 福谷 直人 氏

リハビリテーションの専門職である理学療法士として、整形外科等で臨床経験を積みながら、京都大学大学医学研究科にてPh.Dを取得。博士課程在学中に出場した、多数のピッチコンテストでの受賞を経験し、2016年4月に株式会社バックテックを創業。現在は、健康経営・保健事業の支援をポケットセラピストを通して推進している。

┃病院で提供されるレベルをオンラインで提供する

-バックテック社、立ち上げの背景を教えてください。
私は以前、病院で理学療法士というリハビリの専門職をやっていました。それと同時に京都大学の大学院で研究も行っていました。日中働き夕方から大学院に行く、当時はけっこう激務でしたね。
研究では最初COPDなどをテーマにしていましたが、後半では働く人の健康をテーマに、健康経営銘柄を取得している株式会社フジクラで、働く人の生産性にどう影響するかなど研究してきました。

バックテック立ち上げの理由は、患者さんの中には仕事を辞めないと仕事が忙しく、なかなか治療にも来られない人がいまして、ある日『仕事をやめないと受診できなかったので、仕事辞めてから来ました』という腰痛患者さんを担当しました。これは患者個人の問題だけでなく、その人を雇っている雇用主としても大きな損失ではないかと思いました。
この課題に対応するためには、医療職が医療現場だけにいるのではなく、環境に依存されない治療を提供する必要があると思ったのです。
そこで、大学院時代に検討してきたサービスモデルを、GTEP(Global Technology Entrepreneurship Program)という起業家育成プログラムがあり、そこに応募したところ受賞することができました。その後、他のピッチコンテストもいくつか受賞することができ、投資家からも社会的意義を評価してもらえました。
私が医療現場に立つと年に120名くらいしか診ることができないのですが、多くの人に提供するためには会社という組織が必要と思ったのです。

Health 2.0のピッチコンテスト優勝のパネルを持つ右:金丸隆之氏、左:福谷直人氏
Health 2.0のピッチコンテスト優勝のパネル
(左:金丸隆之氏、右:福谷直人氏)


-病院で働いていた話しと研究の話しは少し違うように聞こえました。もう少しつながりを教えてください。

病院では夜の外来が多かったので、患者さんのほとんどが働いている人でした。患者さんの仕事上、こんな動作がし難い、痛くて集中できないなど聞くことが多かったです。この痛みが働くことへのパフォーマンスにどう影響するのかというテーマが2014年あたりから盛んに研究されていて、目に見えないコスト損失が生じていることを知り、自分の研究でも結びつけて考えるようになったのです。それでフジクラ社に提案しに行きました。

もともと大学院時代は研究職になろうと思っていました。学ぶことも人に教えることも好きでしたので。
医療現場では診られる数に限りがあるため、研究をして、その結果を現場の医療職の方々に役立ててもらえるならよいと思っていたのですが、現実は違っていました。まず京都大学では論文は英語で書かないとなかなか評価されません。しかし国内の医療職は英語の論文を正確に批判吟味しながら読める人はほとんどいません。これでは研究者からは評価されても、現場で役立てることができません。
それなら、自分の研究だけでなく、世界で発表されている論文を活かして、今困っている人達に提供できるやり方を考えようと切り替えたのです。

-病院で働いていたときも、肩こりと腰痛が一番のテーマでしたか?

もちろん脳血管障害や骨折などありますが、肩こりと腰痛が一番多かったですね。

-「ポケットセラピスト」では施術をしないと伺いました。コミュニケーションでのアプローチをされているようですが、そのやり方は、医療現場をやっているときからのものですか?

そうです。ほとんど患者さんを触らないです。それは医療職に依存してほしくないからです。

例えば、高齢者はカフェに来る感覚で整形外科に通うことがあります。おしゃべりもできて、先生に治してもらえるからと。それが当たり前になってしまうのです。病院に毎日通うのが当たり前っておかしいですよね?
もし、その医師やセラピストがいなくなったらその患者さんはどうなるか?その先生の存在が生活にまで影響を与えることになります。先生とはいえ、他人に依存しては生活が成り立たなくなると思うのです。
ですので、コミュニケーションを取りながら、リハビリなど、患者さん自身が自分でできる何かを一緒にやるようにしています。その行動でどう変わったのかを問いかけ、自分で行った行動による変化を実感してもらうようにしています。自分でケアできることを知ってもらうようにしているのです。

依存することで、本当は来なくてもよい方が多く通院しているのが現状です。自分でケアできるようになることで、以前から問題になっている医療費全体の削減にもつながると思っています。

-福谷さんが、病院でそのようなアプローチを行ったことで、病院依存の方は減りましたか?

多くの方が病院を卒業できたと感じています。
ただし、全ての方がそうできるわけではありません。例えば、7年も通っている人は、自分でケアすることを実感できても、通院する癖が治らないことはありました。今はよくても、悪化するといけないから一応通院しようと思ってしまうようです。

-福谷さんのお話しで、とても納得感があったのが、「自分の体を改善することに対して、人に依存せず、自分でケアしていく」ことです。
我々は生活習慣病の予防・改善を支援することが多いのですが、その中で重要視しているのが、「このやり方が効果あるからやりなさい」とするのではなく、「自分なりのやり方を見つけていきましょう」という、提供者が主役ではない、ユーザーが主役となるアプローチです。これにより、サービス提供終了後、自立して取り組めることを目指しています。
「ポケットセラピスト」ではやり方は違えど、福谷さんの取り組みは、我々のアプローチと非常に近いものだと感じました。

そうですね。ヘルスケアのサービスは自分でケアできるようにすることが大切だと思います。

-「ポケットセラピスト」でも、自分でケアをして自立を目指すものですか?

そうです。自分でケアできるようになるのが理想的な姿だと思います。

 

┃専門職とのコミュニケーションで改善に向かう「ポケットセラピスト」

ポケットセラピストタイトル画像

-「ポケットセラピスト」について教えてください。

現在、法人向けのソリューションとして提供しています。生産性、パフォーマンス向上を目指し肩こり腰痛を改善するサービスです。
提供の仕方は、理学療法士がセラピストとしてオンライン上で認知行動療法を使ってユーザーを支援していきます。現在、登録しているセラピストが全国に約150名います。

-サービスの流れは、問診をして、その方にあった気づきを与えていくようなイメージでよいでしょうか?

そうですね。最初だけでなく日々の活動をオンライン上で記録してもらいます。記録することで自分の行動や習慣、生活の乱れなどを見える化し、認知の変化を促していきます。
問診の結果でもいろいろな症状があります。症状により適した対策があり、それをガイドライン化して、セラピストがそのガイドラインに則り適したサポートを行います。

-ガイドラインのパターンはある程度決まっているのですか

痛みはマルチファクターなので、一概に言えないことがあります。あくまで参考とするパターン例を提示し、セラピストが状況に合わせて適切に対応できるよう教育しています。

-登録しているセラピストは、貴社の取り組みに興味がある方々が応募して集まっているのですか

そうです。最初に面談をして我々のサービスに適切な方だと思えたなら、セミナーなどで教育をしていきます。また毎月最新の論文をサーチしていますので、その中で役立つものはセラピスト達に共有しています。
セラピストと対象者がやり取りを行うチャットを我々本部側でも確認するようにしています。例えば、エビデンスに基づいていない情報をセラピストが提供した場合、報酬に影響する評価に反映して伝えるようにしています。
セラピストの教育は最初だけでなく、毎月定期的に行うようにしています。

ポケットセラピストサービスイメージ

 

-サービス提供として考えた場合、オンラインのコミュニケーションは、リアルに比べて意外と難しいですよね!?オンラインでのコミュニケーションは、どうされていますか?

非対称性の時間を取るか?対称性の時間を取るか?やり方はツールによって変わると思っています。例えば、スカイプのようなものであれば対称性の時間を取らなければならないです。これはやってみるとネガティブな意見が多くなります。チャットは非対称性の時間で進むことができるので、対象者も提供者も固定した時間を取る必要がなくなります。またコミュニケーションにおいて、自分の症状をどのように伝えるのか?これをテキストでやろうとすると難しさを感じてしまうのですが、LINEのスタンプのような感覚で、痛みの程度のログなどを用いて表現してもらい、それを見たセラピストから会話を促すことで、スムーズなコミュニケーションがされるよう工夫しています。

-「ポケットセラピスト」の具体的なプランについて教えてください。

2種類あります。アドバンスドプランとスタンダードプランです。
アドバンスドプランは専属で担当がつきますが、スタンダードプランは1対1で担当はつかず、そのとき対応できるセラピストがコミュニケーションします。
アドバンスドプランでは、チャットを使って1対1でやり取りを繰り返し、コミュニケーションを深めることができます。
スタンダードプランでは、チャットではなくユーザー専用の掲示板を提供し、そこに複数のセラピストが書き込めるようになります。深めると言うより、困ったときなどに質問を書き込むと回答がもらえるものになります。

-アドバンスドプランでは、どれくらいのコミュニケーション頻度になっていますか?

ユーザーによります。ある程度コントロールできている方なら月数回程度ですが、本当に困っている方ですと月数百回になることもあります。今は制限を設けてはいないです。


-セラピストの作業量はユーザーによってかなり変わるようですが、セラピストの収入に反映するのですか?

評価制度として、セラピスト内でのヒエラルキー制度を導入しています。ユーザーの声や実際のチャット内容などを含め、毎月評価をし、各セラピストのスコアを算出しています。そのスコアが良好であればステップアップして、報酬が上がったり、質が落ちれば報酬が下がるという仕組みです。
今後はこのポケットセラピストをやるだけで、独立した収入を得られるようになってもらいたいと思っています。

-参加するユーザーは、申し込んだけどすぐにスタートできない場合もあると思います。そのような方はどのようにフォローしていますか?

ユーザーの利用動向を検知し、気持ちよくスタートが切れるよう、様々な角度から支援しています。ここをしっかりやることで離脱率も変わってきます。

-効果的な支援として、どのようなことをしているのですか?

例えば、企業向けに導入しているので、ユースケースとして仕事中にアプリ登録をしていて、事前アンケートに回答している途中に誰かに呼び出されて回答が中止してしまうことがあります。そのままにしておくと進まないので、途中での離脱を検知し、翌日にフォローしてあげるなどすると、ユーザーはアプリに戻ってきて、利用を再開してくれるようになります。
こういうフォローを積み上げていくことで離脱率が変わってきました。

-病院に通院していた人が来なくなると、良くなったからなのか、治らないと思って諦めてしまったかはわからないと聞くことがあります。
「ポケットセラピスト」を受けた人でも、ある程度の段階で離れていくことはあると思います。そのあたりの評価はどうされていますか?

そうですね。病院への通院と同じようなことも言えるのですが、「ポケットセラピスト」の場合の特徴として、改善してからも比較的利用する方が多いと思っています。
例えばぎっくり腰を経験した方だと、またぎっくり腰になりたくないと思っているので、予防のためにも続けたい方もいます。
通常、医学研究の基準として、痛みの評価(NRS)では10段階の内、3であれば痛みと定義はしないことが多いのですが、3の状態でも気になる方はそのまま使うこともあります。

-「ポケットセラピスト」のサービスは、ある程度プログラム化されているようですが、プログラム期間を設けているのですか?

基本的な考えとしては3ヶ月を目処に定点評価していますが、通常契約いただく企業は通年通した契約です。症状の軽減までの目安として3ヶ月を一つの評価時期としています。
また痛みを取るためのフェイズと再発予防のフェイズがあります。改善したと思えたなら、再発予防のための取り組みがスタートしていきます。各フェイズでやることはかなり違います。

-このサービスによる改善度など評価しているものはありますか?

一例になりますが、改善率ではなく、痛みの程度の変化量を見るためにMCIDという定義がありますので、3ヶ月の間にどれくらいの人が超えることができたかを評価しています。ある企業では76〜81%の数値になりました。

-やってみたけど改善しなかったと言う人もいると思います。そのような方の傾向などありますか?

そのような方の動向を見ていくと、やはりアプリをほとんど使っていないです。その方の悩みを見ていくと、使ってもらえさえすれば解決する自信はあります。しかし、自分の考えに凝り固まり、アドバイスを受け入れてくれない方はいます。
先入観が強い方はいますので、最初に患者教育を取り入れるようにしています。巷にある間違った情報に執着しているケースが多いので、最新のエビデンスなどを提示して、正しい知識に目を向けてもらえるようにしていきます。もちろん、性別や年齢でアプローチは変えるようにしています。

 

代表アプリデータ

ポケットセラピストタイトル画像

アプリ名(webアプリ) ポケットセラピスト®︎
リリース日 2017年6月9日
提供方法 法人契約後、指定URLを提示

企業情報はこちらをご覧ください。
お問合せはお気軽にメール(info@backtech.co.jp)にてご連絡ください。

 

現在のアプリ登録数

アプリカテゴリー

デバイス